AGAについて
- 2021年7月4日
- 疾病関連
皆さんお久しぶりです。東京オリンピックとコロナワクチンがトピックとなっているタイミングで少し場違いな感じもありますが、今回は少し趣を変えて、男性にとってより身近な疾患であるAGAの話を2回に分けてお伝えしたいと思います。
AGAとは?
さて冒頭から略語だらけの難解な出だしで恐縮です。医療界に限らず巷では略語ばやりですが、さて皆さんはAGAという医学用語はご存知でしょうか?男性読者の方には聞き馴染みのある言葉になってきたかもしれません。ご存知ないという方のためにAGAという言葉の説明から始めたいと思います。AGA(エージーエー)とは、Androgenetic Alopeciaの略で「男性型脱毛症」のことです。成人男性の多くが気にかけているいわゆる“髪が薄くなる”状態のことです。男性ですと思春期以降に額の生え際や頭頂部〜後頭部の髪が薄くなっていき、軽症の方も含めると、30代で約10%、60代で約50%、平均で30%が発症すると言われています。この男性型脱毛症は古来より多くの男性を悩ませてきたため,洋の東西を問わず発毛,育毛を謳う商品が、世間では溢れかえっていますよね。週刊誌を読んでいますと科学的根拠の疑わしい育毛サービスの広告が目に飛び込んで来ます。
EBMに基づく医療?!
週刊誌でもよく、〇〇という高血圧のクスリは危ない!という特集が組まれ、高名そうな医師がコメントを寄せているため、一般の方にとっては、病気に対しこの治療法(治療薬)を続けても大丈夫なのか?その選択に非常に迷うことが多いかと思います。近代医療における最近20年間は、根拠に基づく医療 (evidence-based medicine;EBM)の実践というものが、声高に叫ばれるようになってきました。また患者さん方からも、このEBMと呼ばれるものを強く意識した意見や質問が多くなってきたことを踏まえ、各医学会からは、医療者のみならず学会ホームページを訪れて頂ければどなたでも読むことができる、疾患ごとの『EBMに基づく治療ガイドライン』が数多く発表されて参りました。また“根拠”に値する、質が十分担保された研究や論文も毎年続々と出てきますので、ガイドライン自体の見直しも定期的に行われています。『男性型脱毛症』についても2010年度発表のものを改定した2017年度改定版治療ガイドラインが出ておりますので、今回は内科医的視点で当ガイドラインの解説をしてみたいと思います。なぜ内科医がAGAの解説するのか、その理由はまた後ほど後編でお伝えします。
AGAの原因とは?(タイトル)
まずAGAの成り立ちですが、いわゆる遺伝的素因(祖父や父親)の有無と、男性ホルモンの影響であることが主因であることが知られており、こちらは何となく皆様お気づきかと思いますので、解説は省略します。次に、ヒトの頭髪のヘアサイクルについて説明致します。
頭髪は、通常2~6年の成長期という1本1本の毛が太く長く成長(硬毛)する時期があります。十分成長しますと、毛の老齢化である退行期という時期に移ります。その後アポトーシスと呼ばれる死期を迎え、3ヶ月程度ミイラ状(休止期)になります。やがて次の成長期に入ると、古い頭髪が抜け落ち,新しい頭髪へと入れ替わるのです。
男性型脱毛症では,頭頂,前頭の硬毛の成長期がどんどんと短くなり, 毛が十分育たず軟毛化していくと言われております。そしてついには毛髪が皮表に全く出現して来なくなるのです。軟毛化や無毛化を作物で例えるならば、軟毛化は栄養不足や陽が当たらず、十分育たない種苗と表現され、毛髪が出てこない無毛化は畑に種は埋まっているものの、成長期がなくなり芽が全く出てこない状態と表現できるかと思います。さて続きは後日後編で。