腎臓内科
腎臓内科
腎臓内科を受診頂きたい方々は、職場健診での尿蛋白、尿潜血異常を指摘された方、以前どちらかの医療機関で腎臓の血液数値に異常があると言われていた患者さん方です。おしっこの色が明らかに赤い、または背中に鋭い痛みを伴う場合は、泌尿器科の受診をお勧めします。
これまで永らく「腎臓病は治らない難しい病気である」と考えられてきました。医療は日々進歩していますが、いまだ根治に至らない腎臓の病気があることもまた、事実です。腎臓は血液をろ過しておしっこを作っている臓器ですが、腎臓のろ過装置は糸球体(しきゅうたい)と呼ばれています。この糸球体に炎症が起こり、タンパク尿や血尿が出る病気のことを総称して糸球体腎炎と呼んでいます。このうち慢性糸球体腎炎(以下、慢性腎炎)は、タンパク尿や血尿が長期間(少なくとも1年以上)持続するものをいいます。腎臓内科は本来、この慢性腎炎の治療に当たることが主な仕事でした。尚、慢性腎炎は1つの病気ではなく、さまざまな病気の総称です。研究によって、それぞれの慢性腎炎が起こるメカニズムが少しずつではありますが、明らかになってきました。ただ、同じ疾患でも病気に至るメカニズムが複数あることが想定されており、病状の進行の違いなど、治療方法を含めまだまだ分かっていないことも多いというのが現状です。
免疫反応の異常により、発症するものが多い
血尿、タンパク尿、高血圧、むくみ(浮腫)、倦怠感など
基本は食事療養や薬物療法です。むくみが強い場合は、利尿薬を使用して血液中の塩分と水分の排泄を促します。体重管理と血圧管理は非常に重要で、尿・血液検査と組み合わせて病状をコントロールしていきます。日常生活では、激しい運動や過労を避けることも必要です
糖尿病性腎症は糖尿病合併症のひとつです。糖尿病性腎症では、糖尿病治療を継続頂いていれば、急におしっこが出なくなったといったことは極めて少なく、通常、長い年数をかけて病気が進行していきます。ですので、できるだけ早期に適切な治療介入をすることが重要になってきます。尚、腎臓の病気が最も進行した状態のことを末期腎不全と言いますが、末期腎不全となり、透析治療を受けている患者さんのうち38.8%(2016年末現在)の方が糖尿病性腎症です。透析に至る原因として最も多い割合を占めています。
糖尿病で血糖値の高い状態が長期間続くことで、全身の動脈硬化が進行し、毛細血管の塊である腎臓の糸球体でも細かな血管が壊れ、網の目が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなる、とされています
糖尿病の進行期を示した図をご覧ください。
糖尿病性腎症の第1期(腎症前期)、第2期(早期腎症期)では自覚症状はほとんどありません。このため、尿検査をしないと判断できないのです。
第2期では、ごく微量のタンパク質(微量アルブミン)が漏れ出てきますが、適切な治療によってタンパク質が漏れ出ない状態に戻すこともできます。第3期から、むくみ・食欲不振・満腹感などの自覚症状が出ることがありますが、症状の出現頻度としては決して多いものではありません。糖尿病性腎症は、進行していくことで、たくさんのタンパク質が尿に出てくるようになります(顕性蛋白尿)。ここまで進行すると、次第に血圧も上昇し、高血圧によっても血管が傷つけられ、さらに腎臓の状態を悪化させるという悪循環が見られます。第4期〜第5期では、強いむくみ・息切れ・胸苦しさ・顔色が悪い・易労感・嘔気あるいは嘔吐・筋肉の強直・つりやすい・筋肉や骨に痛みがある・手のしびれや痛みなどの自覚症状が出てきます
第2期および第3期では厳格な血糖コントロールを行ないます。血糖コントロールは、低カロリー食、運動療法が基本ですが、糖尿病薬の服用や、インスリン注射での治療も行われます。第4期になると厳密な低タンパク食にする必要があります。食事療法としてタンパク質の摂取制限を行いますが、血液中のクレアチニン値の上がり方やむくみの程度によっては透析療法の準備をします。
糖尿病性腎症では高血圧を伴うことも多いため、降圧薬の使用も重要で、薬剤によっては蛋白尿を大きく減らす効果も期待できます。第3期以降では、進行を遅らせることはできても、良い状態に戻すことはできないため、第2期の段階までで糖尿病性腎症をみつける必要があるといえます
病期 | アルブミン値(mg/gCr) あるいは 尿蛋白値(g/gCr) |
腎機能・GFR(eGFR) (ml/分/1.73m2) |
有効な治療法 |
---|---|---|---|
第1期 (腎症前期) |
正常(30未満) | 30以上 | 血糖コントロール |
第2期 (早期腎症期) |
微量アルブミン尿(30〜299) | 30以上 | 厳格な血糖コントロール降圧治療 |
第3期 (顕性腎症期) |
顕性アルブミン尿(300以上) あるいは 持続性タンパク尿(0.5以上) |
30以上 | 厳格な血糖コントロール、降圧治療、タンパク質制限 |
第4期 (腎不全期) |
問わない | 30未満 | 降圧治療、低タンパク食、透析療法導入 |
第5期 (透析療法期) |
透析療法中 | 透析療法中 | 透析療法、腎移植 |
ネフローゼ症候群は単一の病気ではなく、これまで説明してきた慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などのうち、基準を満たす程度まで蛋白尿が出ている状態(病態)のことを指します。以下がネフローゼ症候群の診断基準になります。
1,2を満たし、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群と診断する。
1,2を同時に満たし、明らかな原因疾患がないものを一次性ネフローゼ症候群と診断します。一次性(原発性)と言うのはネフローゼ症候群を来たす明らかな原疾患がない場合を言います。逆に明らかな原因がある場合は、二次性(続発性)ネフローゼ症候群と呼びます。
尿の中に血液(赤血球)が含まれている状態のことです。血尿には大きく分けて、目で見て明らかに血尿とわかる肉眼的(にくがんてき)血尿と尿検査をして初めて分かった顕微鏡的(けんびきょうてき)血尿があります。出血部位は以下のいずれかが当てはまります。
の3つです。
健康診断や人間ドックではおよそ10%の方に顕微鏡的血尿(尿潜血陽性)が見つかります。検診やドックで血尿が発見された場合は、症状がないことがほとんどですので、上記Q1の症状別受診科案内を参考に、尿路結石の既往や、背部痛や膀胱の違和感などがある場合は泌尿器科の受診をお勧めします。
無症状である、今まで血尿を指摘されたことがない場合は、当院を受診ください。受診後、問診や診察を進める過程で、必要な検査を行ない診断をしていきます。CTなどの大型医療機器が必要であると判断した場合は、近隣施設にご紹介します。また数回の受診で、診断がつかない場合でも、経過中に病気がはっきりしてくる場合もあります。症状がなくても専門医の診察を受け、指示にしたがって定期的な経過観察を続けてください。