町田駅前内科クリニック

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新型コロナウイルスの抗体検査について


皆さんこんにちは。東京都内の新型コロナウイルスの感染者数は増減が大きく、流行状況が非常に追いにくい状況が続いております。さて今回は、巷の医療機関でも検査を行い始めている新型コロナウイルスの抗体検査薬について、5月5日現在の状況についてご紹介しておきます。

新型コロナの検査方法

さて新型コロナウイルスの感染を調べる検査法は大きく3つあります。1つめはトレンドワードにもなっているPCR検査、2つめは抗原検査、そして3つめが抗体検査です。

PCR検査については他のサイトでも詳述しておりますので説明を省かせて頂き、今回は抗体検査について解説をさせて頂きます。2ヶ月前の2020年3月に横浜市立大学が抗ウイルス抗体の検出に成功し検査キットの実用化を目指していることが発表されました。また中国国内では2月時点で既に新型コロナ検査キットが使用されており、3月に入り国内繊維メーカーのクラボウが、研究・検査機関向けに中国からの輸入販売を開始しています。

ただその後、スペインやイギリスなどヨーロッパ各国、そして最近ではインドでも、中国製検査キットの精度には問題があり使用を取りやめた等の報道がなされております。中国製検査キットの精度が低い要因は定かではありませんが、それでは、そもそも抗体とは何でしょうか?

抗体とは?

生物には外敵から身を守るために免疫というシステムがあります。免疫の中でも液性免疫というシステムで作られるタンパク質が抗体です。体内に外敵が侵入してきますと白血球の一つである形質細胞から、IgMという感染早期に出てくる抗体が作られます。IgMは体が大きく、外敵をたくさん捕まえるための手をたくさん持っています。ですので感染初期にIgMが出てくるのは生体にとって理に適っています。さて次に、遅れて出てくるのはIgGという抗体で、感染後しばらくして血中に増えてきて、感染症の治癒後も長く血中にとどまります。

これら抗体が血液中にあるかを調べる方法に、イムノクロマト法(免疫を意味するimmuneとギリシャ語で色を意味するchromaが語源)という呼ばれる検査方法があります。抗原抗体反応(鍵と鍵穴の関係のように、特定の個体を識別し結合しあう反応)を利用した迅速検査の一つです。

イムノクロマト法の原理

標識粒子が敷き詰められたろ紙の上に、血液などの検体を滴下することで、目的の抗体が含まれていれば、ろ紙上の標識粒子と複合体を形成します。形成された複合体は毛細管現象によって、ろ紙上を移動して行きます。その先に複合体を捕まえる別の抗体が線状に配置されており、複合体と結合すると発色する仕組みになっています。

イムノクロマト法は、発色によって目視で結果を判定することができるため、非常に簡便な検査方法として、インフルエンザの診断キットや市販の妊娠検査薬などでも用いられています。しかし、病気を持った患者さんを正しく陽性と判断する“感度”と呼ばれるものはさほど高くなく、また調べたい検体中に抗原が含まれていてもちゃんと発色しない“偽陰性”や、逆に抗原が含まれていないのに発色してしまう“偽陽性”もありえます。インフルエンザの検査キットの“感度”はだいたい60%程度と言われており、実際にインフルエンザに感染している患者さんでも10人中3〜4人は、簡易検査で陰性と判定されますし、特に発症して間もない場合は偽陰性になりやすい点も注意が必要です。また今回の新型コロナウイルスに感染した中国国内の患者の中には、6%程度の人に抗体ができなかったという報告もあります。

抗体検査結果の解釈について

結果の判定を受ける場合に、患者さん方にも結果の解釈には上記のような、偽陽性、偽陰性の場合があることを是非知っておいてもらいたいと思います。仮に新型コロナウイルスの抗体検査を実施して陽性だった場合、自分は抗体を持っているから大丈夫だと解釈してもいいのでしょうか?

米国歌手であるマドンナさんが出したツイッターの記事を皆さんもご覧になったかもしれません。先日、抗体検査で陽性であると判定したことから、ドライブに行ってくると投稿しています。さてこの件について問題点はどこにあるでしょうか。恐らく3点ほどあろうかと思います。ここまで読んできて下さった皆さんはもうお気づきかと思いますが、そもそも偽陽性である可能性はないのか?(交差反応する他の抗体に反応した等)という点、2点目は、検査で調べた抗体が、そもそも感染そのものや重症化を予防ができる抗体を反映しているのか?3点目が、もし重症化予防ができる特異的中和抗体だとして、その抗体量は十分量あるのか?ということ3点です。

コロナウイルスの抗体はいくつある?

一つのウイルスに対し、体内でできる抗体は1種類だけではありません。エイズの原因ウイルスであるHIVウイルスを例に挙げて説明します。ヒトがHIVに感染した場合、ウイルスに対する特異的抗体ができます。またHIVの感染を調べるために、この抗体を利用して検査を行います。ただ残念ながら、この抗体には感染を防ぐ働きがほとんどなく、HIVは特異的中和抗体ができにくい性質を持っているため、自然経過でウイルスを排除することができないのです。またB型肝炎ウイルスを例にとっても、思いつくだけでもHBs抗体、HBe抗体、HBc抗体など3つの抗体がすぐに挙がりますので、ウイルスの特異的中和抗体を十分持っているかという視点が非常に重要です。

抗体検査には意味がない?

ただ現時点で抗体検査は意味がないのかと言えば、そうではないと思っています。例えば顔に無数の古傷のあるボクサーが果たして強いのかどうかは分かりませんが、少なくとも多くの試合(練習)をしてきただろうことは分かります。抗体(傷)が陽性であれば少なくとも感染の既往があるだろうことは分かりますし、初感染の人よりは新型コロナに対する戦いに有利に進められそうだという予想が付きます。(ただし2回目の戦いにもちゃんと勝てるかは不明です)政治を含め、確実なことが少ない昨今の状況においては、人類とウイルスとの戦いの中で、積み上げていくべき知識・経験のうちで、抗体を持った人たちの現場復帰が有効だったかどうかという検証は必要で、まずは抗体検査を行い、“抗体検査陽性の人で、かつ症状が消失している人”から、社会や医療現場に復帰してもらうという道筋をつけておき、その後起きることが予想される問題点(抗体陽性者が再感染をした場合の病状追跡や、新型コロナウイルスは腸管などからの排出期間が長期であると言われているため、抗体陽性者から、健常者へ感染させる可能性のある期間の検証など)に対処しながら、経済活動を復帰させていく方法が、現実的ではないかと思っています。

ただ忘れて欲しくないのは、こういう人たちはあくまで感染の既往を持っているだけであり、2回目の新型コロナとの戦いに勝てるかどうかは全くの不確実であるという状況です。ですので、あくまで治療薬の開発・承認やワクチンを急ぐべきであり、あくまで次善の策という位置づけになる点を忘れないで頂きたいと思います。自粛ばかりで不安が募る日々ではありますが、知恵を出し合いこの難局を乗り越えていきましょう。尚、当院でも抗体検査を今後行う予定ですので、キットが入荷しましたら改めてHPでお知らせ致します。